昔々、その昔。テレビで見た、とあるコンピュータ映画が強く印象に残りました。
アメリカはソ連と核で対峙するに当たり、偶発核戦争の発生や、あるいは対処が遅すぎる事態を危惧します。そこで、人間と違ってミスを犯さず、膨大な情報を正しく収拾し、感情に左右されない結果を出すシステムに核を管理させようと決断しました。その結果完成したのが超巨大コンピュータ、コロッサス。一旦稼働したが最後、アメリカ自身ですら停止出来ず、365日、24時間ずっとソ連を監視するマシンです。
しかし、コロッサスはホワイトハウスでのお披露目パーティーの場でソ連に同種のコンピュータ「ガーディアン」が存在することを指摘。交信の許可を求めます。開発者のフォービン博士は、やがてコロッサスが設計目標を大きく超えた能力を持ち、独自に物を考える能力があると気づきますが………
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 発売日: 2008/08/07
- メディア: DVD
- 購入: 7人 クリック: 934回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
見たのは30年以上前のはずですが、非常に印象に残った映画でした。前半、コロッサスとガーディアンがまだ自分達の管理下にあると信じている合衆国とソ連は、コンピュータを出し抜こうと策を講じます。しかしながら、それらの策は次々に先を読まれ、核ミサイルによる被害が発生し、開発チームにも危害が及んでいきます。その間の人間対コンピュータのチェスのような行き詰まる戦いが、限られた時間と少ない説明の中で見事に表現されています。
後半少したるんでしまいますが、クライマックスの声明シーンからエンディングまで、見事に引き込まれる映画でした。
自我を持った強大なコンピュータ対人間のテーマはいろいろな作品があります。が、正面対決の場合、結果にはそれほどバリエーションはありません。
- 人間の勝利
- 人間の敗北
- 和解
珍しい例としてクラークの短編集「白鹿亭奇譚」にはコンピュータが引きこもる、という作品もあります。ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」は、コンピュータが最初から味方ですから対決ではありませんでした。
この作品の結末は伏せておきますが、改めて見直して当時見落としていたことをいろいろと楽しむことが出来ました。特に、コロッサスが生みの親であるフォービン博士にコンピュータによる支配のメリットを解く場面は注目に値します。
- 戦争は無駄だから禁止
- 人間は自由を失うが、自由とは幻想だから問題無い
- 他種族による支配ほど屈辱を感じない
- コロッサスによる支配の下、人類は大いに発展するだろう
全知全能にして、厳格な存在にすべてをゆだねれば安寧を得られる。よく聞くセリフですね。侵略者の決まり文句*1とも言えますが、宗教も同じ事言ってるんだよなぁ。裏を返せば、「神を受け入れるなら、なぜコンピュータを受け入れない」と、コロッサスはフォービン博士に迫っています。
最後まで見終わって日本語吹き替えトラックがあることに気づきました。TV放送時の物でしょう。聞いてみたところ、懐かしい声が盛り沢山でした。
大統領とフォービン博士は銭形警部とルパンですね*2。コロッサスの声はブライキングボス役の方です。世界征服機械つながりですか。残念ながら吹き替えは緊張感を削ぎますので、英語と字幕をおすすめします。