03 源氏物語 瀬戸内寂聴版 巻三

機内で読了しました。

源氏物語 巻三 (講談社文庫)

源氏物語 巻三 (講談社文庫)

前の巻のおしまいで、朧月夜の君との密会の現場を抑えられて大恥を書いた源氏の君が、藤壷の君と帝の間のにできた皇太子*1の安全確保および保身のために自主的に都から落ちます。で、落ちた先で紫の君と文通をしているのですが、「あなたのことばかり考えています」と言いながら、反対側の手を明石の君に出す始末。源氏の君との一連の関係が噂になって、帝の第一婦人になり損ねた朧月夜の君は、密会現場を現行犯で抑えられて生き恥をさらしているというのに、源氏の君は「無実の罪で流れて来ました」などと、言う始末。
いけない、いけない。源氏物語は源氏の君を見てはいけないのでした。この巻で印象深かったのは末摘花の君です。もともとの不幸&貧乏で暮らしが厳しかったのを、源氏の気まぐれで一時的に持ち直していたのですが、当の源氏が女癖が悪すぎて失脚。しかも、都を去るとき、目をかけた女には一応生活費の手配をしていたのに、末摘花の君は最初から最後まで忘れっぱなし。復権しても忘れっぱなし。おかげで末摘花の君の生活は急降下です。
容姿の悪さをクソ味噌にかかれている末摘花の君ですが、「蓬生」の前半、木が茂り、よもぎがはびこり、轍が消え、離れが吹き飛び、門が崩壊していくというすさまじい惨状のなか、自分を忘れてしまった源氏の君に思いを寄せること以外できません。荒れ果てた屋敷の中、月の光に照らされてうつむいている姿が絵になりそうな素晴らしい場面でした。

*1:実は源氏の子

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