akuninさんがパジャマでうろつきまわる女の子で私を釣ろうとしています。本当に悪い人だ。そもそもそんなことで私をバンコクに釣れると思っているのでしょうか。
例え、昨日買ったのが山本直樹であったとしても
- 作者: 山本直樹
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2008/07/17
- メディア: コミック
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ともあれ、森山塔といえば、線の細い、物憂いともけだるいとも冷たいとも言いがたい、行動性を感じさせない女性の描写が得意でした。主人公であっても脇役であっても、セックスをしていないときにはうつむいているようなイメージがありました。
さて、山本直樹名義で書いた過去10数年分の作品を集めたこの本。実験的な作品もありますが、20年前と変わらない雰囲気に少し驚きました*1。
20年たって漸くわかったことが一つあります。山本の作品は一貫して出口がありません。どの作品を読んでも何かが解決する気配がありません。ある作品は、あらぬ方向にだらだらと進む時間の断面でしかなく、ある作品はよどんだ時間の中の出来事でしかなく、ある作品は終息を何のカタルシスも無く描いています。
私はメジャーで注目された山本の長編をどれも読んでいませんので、「山本はこうだ!」と言い切ることはできません。が、彼が自分が選んだというこの短編集を見ると、その、出口のない作品がずらりと並んだ様子にたじろがずにはいられません*2。
かつて吉田聡のBirdman rally―鳥人伝説 (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)のあとがきに、宮崎駿は「今は人生にすべてレールがひかれている。そのレールからおちこぼれたとしても、そこにもオチこぼれのためのレールがすでにある。吉田聡の作品はそのレールに対する一貫した抗議の表明だ」といった趣旨の文章を寄せています。山本の作品の登場人物もレールには乗っていません。しかし、吉田の作品とは違い、山本作品の登場人物はレールに乗らないだけではなく、乗ることを拒否すらしません。
自分が金魚鉢の金魚であることを薄々と感じながら、それを怒るでもなく、抗うでもなく、悲しむでもなく、努力も絶望もしない。ただ、閉塞間とも違う出口のない時間の中で、希望も無く生きていくならやることはセックスだけだろうという、非常に後ろ向きな登場人物が列を成しているのが彼の作品です。たまに理由があったり理不尽だったりすると新鮮に感じるくらいです。
「セックス機械論」にまで突っ走ってしまったアダルト・ビデオと正反対の、しかし20年の淘汰を生き延びてきた出口無き時間の作品群。漸く時代は彼に追いつき、いまや多くの人が出口の無さを共感を持って読むことができることでしょう。
内容が内容だけに既婚の皆さんにはお勧めできませぬ。