色あせない生々しさ

最後のページにこう書いてあります。
「本書は1989年2月に現代教養文庫から刊行されたものです」
え?
おかしい。私は学生時代に友人であるMに紹介されて読んだ覚えがあります。だとすれば1988年以前のはず。その答えは訳者あとがきにありました。

この本は私が東京神田の古書店で原書を見つけ、社会思想社に持ち込んで出版してもらったものです。はじめ1巻の分が1980年9月に同社の「そしおぶっくす」の一冊として世に出ましたが、すぐさま…

つまり私が読んだのはそれだったということです。最初の訳が出たのは原著が出てから30年後。それからさらに四半世紀たっています。原著が書かれてもう半世紀たつというのに、この本の内容の生々しさはまったく色あせていません。とても残念なことです。

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

文庫本上下二巻をかけて、筆者はこれでもかと言うほどの疑似科学の例を取り上げます。それらの多くは今でも生きながらえているか、或いは同類が広く支持されています。
「どうしたらこれほど稚拙な口からでまかせを信じることができるのか」と思うものがたくさんありますが、振り返ってみれば私を含めてたいていの人間は権威や証言をそれほど批判的に検証しているわけではありません。水伝の例を引くまでもなく、人間はたやすくどうしようもないたわごとを信じ、擁護してしまいます。
かなり後味の悪い読後感になりかねませんが、お勧めです。