熱くて冷たい熱中性子

核分裂時に飛び出す中性子は、高速中性子と呼ばれ、その名の通り、非常に大きなエネルギーを持っています。しかし、エネルギーの大きな中性子で235Uの連鎖反応を持続させるには、非常に高い濃度の235Uにしなければなりません。その行き着く先が原爆でした。一方、薄い235Uで連鎖反応を続けたければ、中性子の速度をそぐしかありません。
十分に中性子の速度をそいでやると、最後には中性子は周囲の温度で決まる熱エネルギーだけを持つことになります。そのような中性子を熱中性子と呼びます。日本型の軽水炉の場合、炉心の温度は数百度程度です。したがって、中性子も数百度程度のエネルギーを持ちます。これはわれわれの感覚では非常に高いのですが、核分裂時のエネルギーから言えば、とても冷えた状態です。
「熱中性子」というと高エネルギーに聞こえますが、冷えた状態というのはちょっと驚きです。
日本型の軽水炉は、この熱中性子を使って反応を持続させています。つまり、中性子の速度を十分そいではじめて反応を持続することができます。

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