高度制限

Seagate Technologyは16日(現地時間)、エベレスト山標高5,330mにおける同社製USB 2.0外付けポータブルHDDの動作を確認したを発表した。

意外に思われるかもしれませんが、ハードディスクには高度制限があります。ハードディスクの磁気ヘッドは空気の圧力で浮上するため、空気が薄くなると浮上できず、したがって正常動作しないのです。
ちなみに手元の一般気象学*1によると、高さと気圧の関係はこんな感じです。

高さ(km) 気圧
0 1.0
3 0.7
5 0.54
8 0.36
10 0.26

5000メートルで動いたということは0.5気圧で動くということですね。せっかくの宣伝に水をかけるようで申し訳ありませんが、IBMThinkpadをエベレスト山頂に持っていったという記録があります。

実はIBMに話を持ち込んだ当初から、HDDは駄目だろうという話がありました。8,848mのエベレスト山頂は気圧が低いので、HDDのヘッドがディスクに接触してしまいクラッシュするそうです。IBMにテストして頂いて、低い気圧でも使えるHDDを組み込んだThinkPad X23を持っていきました。

記事によればこうして選別したHDDですら、実際には完全動作は望めず、ディスクの特定の部分でだけ動作したそうです*2。それにしても、命がけで上る登山にあんなに重いノートパソコンを持って行ったとは…。
日立やSeagateのHDDのデータシートを開いてみましたが、高度制限に関する事項はありませんでした。しかしチベットアンデスの高地では非常な障害であろうことは想像に難くありません。
すばる望遠鏡のコントロールルームは山頂から遠い下界にあるそうですが、あながち健康上の理由だけではないかもしれません。

真空管

実は真空管にも使用高度制限があります。中は真空ですから変な話ですが、高所では空気が薄いため、対流による放熱を期待できず、過熱して破壊に至るのです。
そう考えると平地で動いている電子機器が高地で動くかというのは興味深い問題です。

真空管といえば

かれこれ四半世紀前のHam Journal誌で読んだ記事ですが、アメリカの人工衛星は送信機用真空管に高真空を与えるため、人工衛星の気密を行わなかったのに対し、ソ連製は気密していたそうです。気密にすると冷却が簡単で熱設計がらくだからとか。微小重力下での空冷をどうしていたのか興味があります。

真空管といえば(2)

ほとんど30年前になりますが、函館に着陸を強行したMig-25戦闘機には「真空管が使われている!」とマスコミで取り上げられました。遅れている、といいたかったのでしょうが、別に珍しい話ではなく、当時はF-15のような最新戦闘機ですら真空管を使っていました。レーダー用の大出力マイクロ波送信機は真空管に頼るしかなかったのです。
記憶ではF-16でオール・ソリッドステート*3になったはずです。あるいは出力管を除いてすべてだったかもしれません*4

*1:リンク先は第二版、手元のものは初版

*2:多分外周部。内周部は線速度が低いため、ヘッドが浮上できないと思われます

*3:死語。昔のテレビやステレオには誇らしげに「オール・ソリッドステート」と書いてありました

*4:グレート・エアクラフト・シリーズに書いてありました

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