マルクビツチハンミョウ

太郎湖は阿寒湖の近所にある小さな湖です(地図)。
前日の釧路湿原の木道に気をよくして、さほど観光スポットとはいえないこの湖に出向きました。道は登山路の一部になっており、雨上がりということもあってちょっとした密林気分です。
さて、道すがら家人が声を上げたのがこの虫。

金属光沢を帯びた深い青の体は、甲虫を思わせます。しかし上翅は腹の一部しか覆っておらず、飛行能力があるとは思えません。何より不気味なのはその腹の大きさです。まるで女王蟻のように不恰好ですが、それにしては一匹でほっつき歩いていますし、そもそも大きさが5cm程もあります。
もぞもぞと動きはのろく、そのくせ土中や深い森に姿を潜ませるという様子もありません。もともと虫大好き少年だったので甲虫ならひょいっとつかむくらい朝飯前ですが、このときは妙な違和感を感じました。撮影のために引っ張り出すのも棒でつついてです。

帰ってきて調べるのに苦労しましたが、漸く正体を突き止めました。名前はマルクビツチハンミョウ。この虫、うすのろのくせに生き残っているのにはわけがあります。体内に青酸カリの5倍も強い猛毒を持っているのです。致死量30mgというその毒は、この虫をつぶしただけで表に出、皮膚から吸収されます。体液が手に付いただけでもその部分はただれ、治るのに2週間かかるといわれます。
こんな虫、どんなにのろまでも鳥や狐に襲われるわけがありません。
妙な胸騒ぎはあながちはずれでもなかったわけです。

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