とてつもなくニッチな読者向けの解説書

読者層の厚さというのは書籍の売れ行きを左右する重要な因子です。当然慎重なマーケティングの元に読者層を測って出版するのだろうと思いきや、専門書と言うのはなかなかそうはいきません。「ねばならぬのだ」という一種の浪花節に後押しされて一刷だけ出版される専門書はたくさんあります。筆者と編集者はきっとこういうでしょう。
「量産型とは違うのだよ量産型とは」
べき論に押し出されて出版される本は、狙ってかどうか、時たま信じがたいほどニッチな読者層向けとして現れます。たとえばこの本がそうです。

21世紀の宇宙観測

21世紀の宇宙観測

21世紀の宇宙観測…どんな内容でしょうか。目次から大見出しを拾ってみましょう。

だまされてはいけません。この本は天文学の本ではありません。天文学用観測機器の本です。かろうじてニュートリノ天文学の章にエキセントリックな天文学がかなり紹介されていますが、ほかの章では天文学など観測機器のつけたし、あくまで観測機器を紹介するための本です。
しかも、天文学に詳しくない人でも上のリストを見ればわかりますが、ずらりと並ぶ測定器はすべて宇宙論の研究用で、きれいなお星様の写真を撮るなどという俗な発想からはそれこそ140億光年くらいかけ離れたブツばかりです。つまり、この本は、

のいずれにもお奨めできません。

  • 最新宇宙論の研究用機材にものすごく興味がある、研究者以外の人

という、ある意味かなりいかれた層にしか受け入れられない本です。
めちゃめちゃ面白かったですけど(^^;
細かい説明は省きましょう。この本を読めばX線の飛来方向というちょっと考えるとわかりそうにない事を調べる方法がわかります。ニュートリノ観測によって銀河系内超新星の予報を出せることを理解できます。すばるの補償光学系のことがよくわかります。

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    ( ^Д^ )  < そこのニッチなあなたにお奨めっ!!
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