ブラックホールの産声、50ミリ秒のガンマ線バーストを捉えた

20分の1秒間だけすさまじいエネルギーを放出した天体をNASA人工衛星が捕らえました。天体から放出される光は、エネルギーが低いと赤、高いと青っぽくなります。さらに高くなると紫外線、X線とエスカレートしていきます。そしてもっと高くなるとガンマ線になります。地球大気はX線ガンマ線を通さないので宇宙天文台で観測します。
20分の1秒だけ大エネルギーを放出するということは、大変なことがおきているということです。科学者たちはこれがブラックホールが生まれる瞬間を捉えたのだと解釈しています。ブラックホールが生まれる瞬間、それまで物質であったものが無限大の重力の中に落ちていきます。ここで開放されるエネルギーがガンマ線として放出されるのです。ガン!と重力崩壊を起こしたあとは、残っている物質が流れ込みますが、生まれる瞬間に比べると微々たる物なので地球からは見えなくなります。今回残光が捕らえられていますが、これは放出されたガンマ線が周囲のガスを加熱したものでしょうか。
ブラックホールの産声とかかれていますが、実際には物質の断末魔ですね。「ギャーーーーッ」と叫びたいんだけど、20分の1秒後にはブラックホールに引きずり込まれるので「ギ」ぐらいしか検出できないのです。20分の1秒の凄みはそこにあります。
ブラックホール超新星爆発でも生まれますが、今回のような短時間の現象はもっと過激な現象の結果だろうと思われています。中性子星ブラックホールの衝突の結果だろうとのこと。
この現象が起きたのは27億光年のかなたです。ぴんと来ませんね。光で旅して27億年かかる距離です。太陽から地球までが光で10分足らず。われわれの銀河系の差し渡しが光で10万年くらい、お隣のアンドロメダ座大星雲までが光で200万年くらいです。27億光年の遠いこと。
時間で言っても27億年前の現象を見たわけですが、27億年前の地球というと、まだ単細胞生物ばかりのころです。一番高等な生物でもミドリムシ程度でしょうか。植物が上陸するのがやっと5億年前ですから、当時の地上は見渡す限り草一本生えていない荒野です。

沸騰する?

リンク先をたどっていくとイメージビデオを見ることが出来ます。Astroartsはシミュレーション動画と紹介していますが、英文のページを読んでもsimulationとは書いていません。なんとなくハリウッド映画くさいエフェクトが使われていますので適当に作ったのだと思います。
仮にこのイメージのとおり中性子星連星系が融合してブラックホールにるのだとしましょう。何がおきるか考えてみましたが、わからなくなってしまいました。
ものの本によると、中性子星連星系は大きな重力波を放出して次第に運動エネルギーを失っていくとのことです。そうすると、この絵にあるように至近距離まで近づき、やがては融合するということなのでしょう。しかしながらここで疑問があります。至近距離まで近づくと、潮汐力によって中性子星の相対する面がぐいと引き伸ばされます。並みの恒星であればロッシュの限界によって決まる包絡面に近い形に星の形がゆがむでしょう。しかしながら、中性子星の場合どうなるでしょうか。
潮汐力によって相手の星に近い表面は見かけの重力が小さくなります。そうすると、表面付近の縮退物質は重力の束縛から開放されてプラズマになり、その直下にある中性子流体はβ壊変を起こして縮退物質になるんじゃないでしょうか。その結果、相手に近い側では中性子星の表面が爆沸状態になって大量の物質が失われます。つまり、中性子星が沸騰して蒸発していくように思えます。
蒸発した物質の一部は公転軸方向に双極ジェットとして放出され、残りは中性子星に再捕捉されるか運動エネルギーをもらって周囲の空間に散っていくでしょう。
で、問題だと思うのは、中性子星が失う物質は、公転に伴う角運動量の小さい部分だということです。結果的に中性子星連星の構成物質のうち、角運動量の大きな部分が残ることから、公転軌道は小さくなりません。重力波によってエネルギーを失う分、中性子星はやせていき、最後には軽いほうが中性子星であることを維持できなくなって爆散するように思えます。
素人による単なる想像ですが、シミュレーションではこういった系は最後に融合してブラックホール化するのでしょうか。興味があります。

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