生命を育む

robanomimiさんがご覧になったビデオの元になる実験がようやくわかりました。論文を見つけてくださったのは、なかをさんです。ありがとうございます。

論文

静岡県木材共同組合連合会の補助金による研究です。

要旨

詳細は論文を読んでもらえばわかることですのでかいつまんで紹介します。この論文の著者等は実験の目的をこう記しています。

木製、亜鉛鉄板製、及びコンクリート製のケージでマウスを飼育し、生活環境が動物の生理機能に及ぼす影響を比較することによって居住性の生物学的評価方法を検討することを目的とした。

細かいところですが、目的は「居住性の生物学的評価方法の検討」だと明示されています。どのように評価するかを検討するのであって「居住性の生物学的評価」は目的ではありません。無論、誤記である可能性もありますが、論文の目的に誤記があるってのはどんなものなんでしょうか。
で、結果ですが

本実験の結果は、各種材質の居住性に対する生物学的評価法として、急性長期、特に乳仔期(哺乳期)における成長ならびに臓器の発達を指標としたマウスの飼育試験の有用性を示すとともに、木製ケージは動物の居住環境として金属またはコンクリート製ケージより明らかに優れていることを示した。

ふむふむ。「飼育試験の有用性を示す」というのは、マウスの生存率や臓器の発育が著しく違うので「生理機能に及ぼす影響」の比較が居住性の評価方法として妥当だと結論しているのですね。ついでに、木のケージがいいといっているわけです。

真の理由

ところで木がいいのなら、なぜいいかを突き止めなければ意味がありません。これについて著者等の考察は明確です。

これらの結果を、巣内温度及び乳仔の体表温度の測定結果と考え合わせると、動物の体と材質との接触面での熱損失の差が動物の熱損失の差が動物の熱代謝に大きな影響を及ぼしたものと思われる。

つまり、体が接触した部分で冷えたせいで 木>コンクリート>鉄 という生存率の差が出たという意見です。妥当な考察と思われます。

間違った実験

しかし妥当な考察なだけに、実験自体が滑稽になってしまいました。熱損失が問題だと思うのならば、それ以外のパラメータはそろえなければなりません。つまり、木、鉄、コンクリートといった素材がマウスに触れず、どの素材を使う場合もマウスに触れるのはポリエチレン膜といった工夫をしなければ、何を比較しているのかわからなくなってしまいます。
いずれにせよ、熱損失が問題だと考察しているにもかかわらず、木という素材の優位性を無理やり結論に持ってくるあたり、恣意的な実験だったといわれても仕方がないでしょう。
わずか2.5gの木屑しか巣の材料を与えられず、寒さに震えて死んでいったネズミを考えると、この論文じゃつりあわないなと感じます。どーかついでがあったらうらにわのねずみのはかに花束をそなえてやてください。