『運び屋』

クリント・イーストウッド主演・監督・制作の映画『運び屋』を見てきました。主演・監督作は『グラン・トリノ』以来とのこと。流されるように麻薬の運び屋に手を染め、警察を出しぬいて毎月100kg単位の麻薬を運ぶ老人の話です。

クリント・イーストウッドといえばオールドファンには『夕陽のガンマン』『ダーティー・ハリー』といったタフな男のイメージの俳優です。流石に最近はタフな男を売り物にしてはいませんが、その一方でほぼ一貫してメインストリームから外れた男を演じてきた人でもあります。今回の作品でもそういった男を演じます。

主人公のアールは90歳。10年ほど前まではデイリリーの栽培で名声を築いていた男ですが、そんな彼の仕事もインターネットによる花の配送に押しやられ、ついには農場を手放すことになります。家族そっちのけで仕事ばかりにうつつを抜かしていた彼に別れた妻は厳しく、孫娘を頼ることもできません。そんな彼ですが、「おんぼろトラックでアメリカ中を走り回った」「一度も警察に捕まったことがない」「どこから見ても人畜無害」といった点に目をつけられ、怪しいブツの運び屋にスカウトされます。怪しいな、と思いつつも最初の仕事で想像もしなかった大金を手に入れた彼はトラックを新調し、農場を買い戻します。やがて金の力に味をしめた彼は、資金難から閉鎖に至る退役軍人会のクラブに寄付をし、学費が出せなくなった孫娘を援助します。一方、絶対に怪しまれないうえに気まぐれにルートを変えるアルは大量の麻薬を運び続け、やがて組織にとっても警察にとっても重要な人物になっていくのでした。

なんと言ってもこの映画、イーストウッドファンとしては90歳のよぼよぼじいさんをかつてのタフガイがどう演じるかが見どころです。暴力沙汰と直面しつつも力づくで物事を解決できなくなった老人役といえば、やはり『グラン・トリノ』を思い出しますが、『運び屋』のアルは90歳。車からなんとか降りてきてよたよたと歩く姿に仰天しました。

映画の制作は並大抵のことではできません。脚本家、出資者、俳優といった人々の間を精力的に走り回って調停していく仕事はエネルギッシュな人間にしかできない種類のことです。それをやっているイーストウッドがヨボヨボのはずがなく、つまりは於いてなお精力的なイーストウッドが、人生の終盤が近づく中で老人をどう演じるか考えた結果があの演技ということになります。すごい。

アルは感情移入しにくい人間です。彼の人生の良い時期は冒頭の数分で終わってしまいます。デイリリーの栽培にうつつを抜かしていた彼は「仕事に生きた」と言えば聞こえはいいでしょう。しかし、作品を通して浮かび上がってくる彼の姿は「重要なことから目を背けて目の前の楽しいことにだけ取り組む」怠惰な人間です。

アルはデイリリーの栽培で成功し、それ故に愛好家の間でチヤホヤされました。それに没頭することで家族の問題から目をそらし続けました。ブツを言われたとおり運ぶだけでいい金になる仕事などあるはずがないと知りつつ金を受け取ります。そんな金で慈善をしても意味はないとわかっているくせに、クラブに寄付をして友人たちからチヤホヤされることを楽しみます。運んでいるのが麻薬だと知っても運び屋をやめません。そして麻薬を運んだ金で孫の学費を援助します。有り余る金で運びの途中もコールガールを呼び、挙句の果ては麻薬シンジゲートのボスに招待されてのこのことメキシコに渡り、あてがわれた女達と夜を楽しみます。そのくせ、ボスの右腕に「こんな仕事はやめろ」と説教します。

どこにも痛快さがありません。ひたすらに人たらしとしてのアルに、退役軍人会のメンバーや、麻薬シンジゲートの下っ端や、ボスの右腕や、警察官といった人たちがなんとはなしにほだされていく場面が続きます。ラジオで懐メロを聞きながら運転を続けるアル。しかしながら、警察の捜査は厳しくなり、それに応じて組織も暴力的になっていきます。観客はふわふわとしたアルを見守るだけ。

そんななか、ついに別れた奥さんが心臓の病で倒れます。症状は絶望的。アルはしぶりながらも仕事の途中でかつての連れ合いのもとをおとずれます。

この作品は、非常に難しい映画でした。それぞれの場面は楽しく、美しく、演技もストーリーも上質。しかしながら、アルに共感できません。彼は数えきれないほどの人の人生を無責任に破壊している麻薬シンジゲートの構成員であり、その金で存分に人生の最後の時間を謳歌しています。

それでも、最後の最後の筋の通し方が、

イーストウッド映画はこうでなきゃ」

という爽やかなものであった点で、私にとっては非常によい映画でした。とくに取り上げるところのない、何者でもない人間がいかに人生を締めくくるか、そんなものを描いた映画でした。

ところでこの映画のパンフレットは「これぞ映画パンフレット」と言うべき素晴らしい作品ですので、映画を見る方はこちらも是非。

居間のAV AmpをOpenHome化してみた

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先日、思うところあって居間のシステムをOpenHome対応にしてみたところ、大変気持ちよくオーディオ・コンテンツを楽しめるようになりましたので、そのことを以下に書きます。

数年前、マランツ・ブランドの薄型AV Ampを買いました。居間のTVにはこのアンプがつながっており、ステレオ・スピーカーを鳴らしています。薄型TV内蔵のスピーカーは音が貧相なので、このシステムを組んで、いい気持ちで映画を観ることができるようになりました。

DLNAによるシステム

さて、このAV AmpにはDLNA Rendererの機能が搭載されています。そこで、購入当初、ちょっと無理をして実験的に下の図のようなシステムを構築しました。

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DLNAだけで構成したシステム

DLNAは家庭用のネットワーク・システムでオーディオ&ビデオ・コンテンツをサーバーに格納しておき、自宅のどこにいてもAVシステムでそれを楽しもうというものです。DMSはDigital Meida Server, DMRはRenderer、DMCはControllerです。Rendererとは、要するに絵や音を出力する装置ですね。DLNAはビデオにも対応しますが、私がとりあえずやりたかったのは、手元のCDからリッピングした音源を居間でも楽しめるようにすることです。

で、このシステムですが散々でした。当初AV AmpのUIからDMSにアクセスしたのですが、あまりに操作性が悪くて断念。まぁこれは、上図のようにスマホDMCアプリを使えばよいことです。

ところが、これも使いにくいのです。一番の問題はDMCのアプリで、アルバム一枚演奏が終わるまで、DMC役のスマホの電源を切れませんし、アプリをバックグラウンドにすることもできません。

要するに常にDMCアプリの面倒を見て置かなければならず、話になりませんでした。

OpenHome

最近になってOpenHomeをというものを知りました。

これは、DLNAの良い所をつまみ食いして、悪いところをただしたようなシステムです。OpenHomeにはいくつか特徴がありますが、最大の特徴は次の2つです。

  • ギャップレス再生が可能
  • プレイリストをRendererが持つ

2番めのものは、ようするにアルバムの再生を指示したあとは、寝っ転がってスマホでネットサーフィンをしようが、雑誌を読もうが好きにできるというものです。考えてみればリラックスして音楽を聴くなど当たり前のことなのですが、DLNAにはできませんでした。

さて、それはいいのですが手元にOpenHome Rendererが無いのでは話になりません。Controllerはスマホアプリを使うにしても、Rendererが無いと音が出ません。

よくしたもので、DLNA RendererをOpenHome Rendererに化けさせるブリッジ・ソフトウェアがフリーで配布されています。Bubble UPnP Serverというソフトです。このソフトはControllerからOpenHomeのプレイリストを受け取り、そのリストに応じてDLNA Rendererに再生指示を出します。ですので、手持ちのDLNAシステムに1要素追加するだけでOpenHomeシステムを構築できます(下図)。なお、OpenHome ControllerとなるアプリはTEAC HR Streamerを使ってみました。蛇足ながら、DLNA RendererにはAmazon Fire StickのアプリであるAirReceiverを使いました。単に、今はAV Ampをネットに接続していないからです。

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Bubble UPnP Serverを使ってOpenHome化したシステム

Bubble UPnP Serverは試験的にUbuntu Desktopを使っているPCに入れてみました。設定は簡単ですし。コントローラの使い心地もまぁまぁです。

Bubble UPnP Serverは、Windows / Linux / MacOS版が提供されており、Linux版はRaspberry Piでも動作します。このご時世、どこのご家庭にも使わなくなったRasPiが放置されていますので、こんなふうに役立ててみるのも手でしょう。

OpenHomeについて

OpenHomeに関しては逆木さんの詳細な記事を参考にしました。

av.watch.impress.co.jp

kotonohanoana.com

ThinkPad x230の互換バッテリを購入した

ThinkPad x230は購入から6年ほど経過しました。この間、結構な頻度で使っています。おそらく3日に1度以上は使っていると思います。

流石に電池がヘタってきました。6年も使っていれば仕方がない…とは言えないんですよね。だってThinkPadですよ。省電力マネージャを駆使してこの6年間、バッテリ充電量を80%くらいに抑えてきたのです。意図しない完全放電も2,3回です。へたるなんて納得できません。

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セルバランス問題のようです…

セルバランスは理屈の上では外部から強制的に放電量を揃えてやれば解決するのですが、何分ThinkPad x230のバッテリは強敵です。海外まで検索してもバッテリパックを綺麗に分解した写真がありません。セルは健在と思えるだけに残念ですが諦めるしかありません。

というわけで互換バッテリを購入しました。

WorldPlus バッテリー LENOVO ThinkPad X230 X230i X220 X220i X220s 対応 6セル

WorldPlus バッテリー LENOVO ThinkPad X230 X230i X220 X220i X220s 対応 6セル

 

 Lenovoの純正にしようかな、とも思ったのですが流石に値段が3倍近く違うと躊躇します。レビューにビクビクしながら購入。最初は充放電の様子が安定しませんでしたが、完全充電と完全放電を2サイクルほど行ったあとは落ち着きが出てきました。

11月21日に80%設定で充電したあと、5日で2%程度充電量が減りました。ちょっと放電量が多いようにも思いますが、もう少し様子を見てみましょう。

ホームグループが無くなった

自分のPCのWindowsを再インストールしたので、家族のPCのホームグループに再接続しようとしました。ところが、できません。

ホームグループはwindowsの機能で、家にある家族のPCに接続されたプリンタを自分のPCから使う、といったことが簡単にできます。ここ数年この方法でそこそこうまくいっていました(トラブルもありましたが)。

が、そのホームグループがないのです。ホームグループの設定方法をネットで検索しても、Windows10にそのための設定がありません。おかしいな、と検索すること数分。しびれを切らした家族が

「私が印刷する」

と言い出しました。これは会社では起きない問題です。家族のPCの管理責任は私にありますが、与えられる時間はほんの少し。勝手にOSの設定が変わるようでは困ります。

結局、自分のPCに戻って検索した結果がこれ。

  ホームグループは Windows 10 (Version 1803) から削除されました

がっくりです。勝手に変えられると困るんですよね。しばらくプリンタは使えそうにありません。

イスラエルのタクシー事情が激変していた

そういえば先月イスラエルに出張がありました。

ホテルからオフィスまでは1.5km程度で歩ける距離ですが、今回は事情あってタクシーを呼びました。タクシーはホテルのドアマン*1に呼んでもらいます。これは過去も必要に応じてそうしていました。20年ほど前はタクシーがホテルに常時数台いましたし、最近でも呼べば10分程度で来てくれました。

ところが今回は、45分!

うそでしょ、私は余裕を持って15分前に呼んだのに。次の日30分前に呼んだら1時間待ちました!

結局イスラエル、というかヘルツェリアでは「ホテルのフロントにタクシーを呼んでもらう」というワークフローが急速に崩壊してしまったようです。現地はGettと呼ばれるアプリが人気で、みなこれを使っているとのこと。

play.google.com

試しに使ってみたら、なんと5分もせずにタクシーがホテルにやってきます。事前にやってくる車のナンバーもわかりますし、決済は現金でもカードでもOK。チップは乗車中に変更できますので運転手も概ね丁寧です。なにより空港に行くために現金を用意する必要がありません。

帰国後オフィスで同僚に話しましたが、みな

「こいつ興奮して何言ってるんだ」

という表情。ところが、その後出張に行った同僚が帰国後開口一番

「あのアプリすごいですね!」

と話していました。迎車に向かっている車の位置もリアルタイムでわかりますし、やはり便利なアプリです。

それにしても、GETTが便利なのはともかく、そのために崩壊している無線配車サービスを誰もテコ入れせず放置しているというのはどういうことでしょう。バカを見るのは知らない旅行者だけです。

なんというか、この雑なところは20年前から変わりませんね。

*1:でいいのかな

Walkman A56を買った

Walkman A56 を買いました。

Walkmanは一時Android Walkmanを使っていたのですが、大きさの割に容量小さいとか筐体も動作も重いために結局それより先に買ったWalkman S754 (8GB)を使い続けていました。購入したのは2011年で、7年間よく働きましたが流石に電池のヘタリがひどくなってきました。画面の黄ばみはともかく、電池のヘタリは通勤用としては困ります。

ということで、Walkman A56(32GB)を新たに購入しました。

手持ちのCDは今年になって全部*1AACフォーマットでリッピングしなおしました。ついでにジャケット写真もそこそこ大きなものをネットで漁りまくって刷新しています。全部で24GB。

「32GB品なら余裕でしょ」

と思っていたらあらびっくり、ユーザー領域は26GBしかないんですね。まぁ、2GBというと、CD数十枚分ですので最近の購買速度を考えればそれほど困らないです。そうでもないかな?最近また聞いてみたい曲がにょきにょき増えていますが、まぁなんとかなるでしょ。

ともかく、新しいウォークマンは転送速度が非常に速く*2、管理ソフトのmusic centerも以前のソニー製管理ソフトより安定で*3、画面がSシリーズより大きくてジャケットを見るのが楽しく*4イスラエル出張でも現地につくまで余裕で電池が持つ*5ので、これからもずっと使い続けることになりそうです。

そうそう、Liイオン電池の充電を90%でストップする機能がついています。これはいいですね!

 

*1:300枚くらい

*2:24GBに1時間かからなかった

*3:転送中1度もフリーズしなかった

*4:音楽再生中に古いアルバムジャケットを見ながら泣きそうになった

*5:ノイズキャンセラつけっぱなしで飛行中に寝ている

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